
2024年、真岡鐵道においてSL運転士がアルコール基準値超えの状態で乗務し、さらに9割の運転士が日常的に検査を怠っていたという衝撃的なニュースが報じられました。
鉄道の安全を根底から揺るがすこの問題。今回は、元乗務員である私が、運転士や車掌が日々直面している「お酒」との付き合い方について、現場のリアルを解説します。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
1. 法律よりも厳しい「0.00mg/l」の規制
法律(鉄道に関する法令)では、検知器を用いてアルコールが検知されないこと(0.05mg/l以下を目安)を確認することが義務付けられています。
しかし、多くの鉄道会社では独自の防衛策として「0.00mg/l(完全未検出)でなければ乗務させない」という厳しい社内規定を設けています。
2. 不正を許さないアルコールの検査方法
検査は、専用のアルコール検知器に直接息を吹きかけて行います。替え玉などの不正を防ぐため、その体制も徹底されています。
- 対面点呼: 管理者の目の前で検査を実施。
- 遠隔点呼: 離れた拠点からの場合、カメラで「本人が吹いている姿」をリアルタイムで撮影・同時に送信。
3. もし「数値」が出てしまったら?
万が一アルコールが検知された場合、その代償は計り知れません。
- 即時の乗務禁止: その場で強制的に帰宅を命じられます。
- 厳しい処分: 会社からの懲戒処分や、将来の昇進に致命的な影響を及ぼします。
- 運行への影響: 欠員を埋める代替を探さなければならず、最悪の場合は列車の遅延や運休に直結します。
4. アルコールを「検知させない」工夫
乗務員たちは、日常生活から逆算して動いています。特にベテランほど自己管理にはストイックです。
- 12時間前ルール: 出勤の12時間前には飲酒を終えるよう意識している人が多いです。
- My検知器の活用: アルコールの分解速度は体質や体調に左右されます。飲む機会が多い人は、自前の検知器を購入し、「今の自分なら何時間で抜けるか」を自分で把握しているケースも珍しくありません。
5. 意外なもので「誤検知」する恐怖
実は、お酒を飲んでいなくても数値が出てしまう「罠」があります。アルコール検知器は、食品や日用品に含まれる成分に反応することがあるのです。
パン(発酵成分)、ガム、タバコ、さらには歯磨き粉やマウスウォッシュなど。
これらに含まれる微量の成分が反応し、危うく「酒気帯び」扱いになりかけることも。そのため、「検査直前には何も口にしない、タバコも吸わない」のが乗務員の鉄則となっています。
