回送列車はなぜ走る?理由と運行の裏側を元運転士が解説

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回送列車の役割とは?

回送列車が来ると少しイライラしてしまうこと、ありますよね。
「回送で走らせるなら、乗せてほしい!」と思ったことがある人も多いでしょう。
でも、回送列車には運行上の理由や目的がたくさん隠されています。
この記事では、回送列車が走る理由だけでなく、もし間違えて回送電車に乗ってしまったらどうなるのかといった疑問にもお答えします。

ファルコ

ファルコ

1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。

この記事の目次

1. 回送列車とは?お客さんを乗せない仕組み

回送列車とは、お客さんを乗せずに走る列車のことです。英語では Out of ServiceNot in Service と表示されます。

Out of Service は「サービス提供中ではない」という意味で、要するに「この電車にはお客さんが乗っていませんよ」ということを表します。
Not in Service も同様に「運行中ではない」「乗客サービスなし」を意味し、英語圏の鉄道でもよく使われる表記です。

回送列車にお客さんが間違って乗らないよう、駅では放送や案内が繰り返し行われます。また、係員が目視でお客さんが乗っていないことを確認してからドアを閉めるなど、細心の注意が払われています。

2. 回送列車が必要な7つの理由

車庫からの出庫・入庫のため

車庫は電車を置いておく場所で、乗降用のホームがありません。そのため、片道は回送列車として走らせます。

運行本数の調整のために回送

鉄道会社は乗客数に合わせてダイヤを作成しています。必要以上の電車は、回送として走らせることがあります。

回送で車掌不要、人件費削減

回送列車は基本的に運転士1人で運行可能なので、車掌が不要です。コスト削減につながります。

ゆっくり移動させるときに回送

お客さんを乗せていると、途中で長時間停車したり、ゆっくり運転するのは難しいです。
回送列車なら、途中駅で長く止めたり時間を調整することができます。

目的地まで速く移動させるときに回送

駅を通過させられるので、乗客を乗せた列車よりも効率よく目的地に届けられます。

回送列車は省エネ・機器の保護にも貢献

お客さんを乗せていない分、加減速が少なくて済み、電力消費やブレーキパッドの摩耗も減らせます。
毎日何本も回送列車が走ると、積もり積もって大きな節約になります。

ホームのない線路でも回送なら可能

お客さんが乗っているとホームのない線路では停められませんが、回送列車なら線路の有効活用ができます。

回送列車で運転士の訓練

新しい車両の導入時や運転士の技能の向上のため、回送列車で訓練が行われることがあります。

3. 回送をお客さんを乗せる電車として運転することはあるの?

状況次第でお客さんを乗せることがあります。

  • ダイヤが乱れて電車の本数が不足した場合:本来回送の電車に乗客を乗せることがあります。

  • 乗客からの要望が多い場合:ダイヤ改正で、回送だった電車を「お客さんを乗せる列車」に変更されることもあります。

4. 間違って回送列車に乗ってしまったら?

終点で回送になる電車に、うっかりお客さんが乗ってしまうことがあります。
係員が乗客がいないことを確認してからドアを閉めますが、見落としてしまった場合やドアが閉まる直前に乗ってしまった場合には、そのまま回送として走り出してしまうことも。
そんなときは慌てず、運転士に直接伝えるか、車内の非常ボタンで知らせましょう。
もし車庫まで入ってしまっても、係員が安全に誘導してくれます。ドアが閉まった後に電車から勝手に降りる行為は非常に危険なのでやめてください。

5. 運転士目線での回送列車

お客さんが乗っていないので、プレッシャーは少なくなります。
「鼻歌をちょっと大きめに歌える」なんていう小さな楽しみもあります。

ただし、普段のダイヤと違う運転や、イレギュラーな線路に入ることもあるため、注意が必要です。
ダイヤ乱れが発生すれば長時間放置されることもあり、意外と運転士にとっても大変なケースもあります。

6. あとがき

今回の記事では、普段あまり意識しないけれど少し不思議な存在である回送列車について紹介してきました。

地味ではありますが、鉄道の運行を支える大切な役割を果たしています。
こうして理由や仕組みを知ってもらえると、次に回送列車を見かけたときに「なるほど、そういうことか」と少しイライラが軽減されるかもしれません。