
【はじめに】
「車掌になりたい」「運転士になりたい」。そんな熱い思いを抱いて鉄道業界を目指す方は多いはずです。私自身も、その一心で鉄道会社への入社を勝ち取りました。
しかし、今の鉄道業界は大きな転換期にあります。単なる「憧れ」だけで入社しようとすると、理想と現実のギャップに苦しむことになるでしょう。元乗務員の視点から、これからの時代がなぜ厳しくなるのか、その理由を書いていきます。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
1. 乗務員という仕事自体の「魅力」が変化している
かつては職人技とも言えた運転士や車掌の仕事ですが、現在はその在り方が劇的に変わっています。
- 運転士:ホームドアの導入により自動運転(ATO)が増加し、将来的には「無人運転」さえ計画されています。操縦の楽しさは失われつつあります。
- 車掌:ワンマン運転の拡大により、車掌というポスト自体が削減の対象となっています。
2. 採用試験のハードル:鉄道ファンが敬遠される理由
面接で「運転士になりたい」と正直に伝えすぎると、かえって不採用になるリスクが高まっています。
今の鉄道会社は、鉄道事業単体での成長に限界を感じています。そのため、「不動産、IT、観光など、他分野のビジネスに興味がある人材」を優先して採用したいのが本音です。鉄道にしか興味がない人は、変化に対応できないと判断されがちなのです。
3. 「一生、現場」というライフサイクルの崩壊
「定年までハンドルを握り続けたい」という希望は通りにくい時代になりました。私がいた会社でもそうでしたが、乗務員はあくまでキャリアの「ステップアップの一部」という位置づけになりつつあります。
特に多角化経営を進める企業ほど、数年で駅や本社、他部門へ異動させられる可能性が高く、現場へのこだわりが強い人ほど精神的な苦痛を感じるかもしれません。
4. 技能の平準化による給料の低下
自動運転などのハード面が整備されると、乗務員への心理的・技術的負担が減り、それが結果として給与(手当など)の削減につながる可能性があります。
乗務員は鉄道会社の中でも「花形」の人気職種です。「給料が低くてもやりたい」という志望者が常に一定数いるため、労働条件が必ずしも向上するとは限らないという現実があります。
5. SNS監視社会による「息苦しさ」
現代の乗務員にとって最大のストレスは、監視社会なのかもしれません。ミスをすれば即座に撮影され、SNSで拡散される。その動画は「デジタルタトゥー」として半永久的に残り続けます。
常にお客さんから監視され、一挙手一投足をジャッジされる環境は、想像以上に神経をすり減らすものです。
