2021年12月に鉄道駅バリアフリー料金という制度が創立されたのはご存知でしょうか?
アフターコロナでの収入減、乗務員不足や少子高齢化など問題山積みの鉄道会社ですが、実はその鉄道駅バリアフリー料金が今後、鉄道会社が生き残っていくための手だてになるのではないかと私は思っています。
鉄道駅バリアフリー料金の導入によってなぜ鉄道会社が生き残る手だてになるのか?なぜバリアフリー料金の導入によって車掌がいらなくなるのか?順々に解説していきます。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
鉄道駅バリアフリー料金制度とは?
鉄道駅バリアフリー料金制度とは「鉄道会社がエスカレーター、エレベーター、ホームドアの整備に利用することを前提にお客さんから徴収する料金」のことです。
鉄道駅バリアフリー料金制度を利用している鉄道会社は申請順にJR東日本、東京地下鉄、阪急電鉄、阪神電気鉄道、西武鉄道、小田急電鉄、神戸電鉄、京阪電気鉄道、大阪市高速電気軌道、山陽電気鉄道、JR西日本、横浜高速鉄道、西日本鉄道、東武鉄道、相模鉄道、JR東海、京成電鉄の17社です。
徴収する料金はJR東日本の場合、切符やSuicaの運賃に対して10円、定期券では1ヶ月定期券280円、3ヶ月定期券790円、6ヶ月定期券1420円となっています。
今後も含めると約3000億円を徴収する予定で、実際のバリアフリー整備費約6000億円の半分を鉄道駅バリアフリー料金でまかなうことになります。
なぜホームドアに鉄道駅バリアフリー料金制度が適用されるの?
エスカレーターやエレベーターがバリアフリー料金制度に適用されるのはわかりますが、ホームドアが適用になるのはなぜなのでしょうか。
実はバリアフリーというと車椅子のイメージが強いですが、視覚障害者に対しての取り組みでもあります。
2017年1月には京浜東北線の蕨駅で盲導犬を連れた視覚障害者の方が線路に転落し、電車と接触して亡くなるという悲しい事故がありました。
このような事故をなくすためにもホームドアの設置は必要なのです。
ホームドアができると自動運転になる
ホームドアのある駅は停止位置数十cm以内に停車させなくてはならず、運転士の手動運転だと停止位置修正が多発してしまいます。
ですので、ホームドアを整備する路線では、自動運転(ATO)または停止位置に自動で止める定位置停止装置(TASC)が基本的に導入されます。
運転士の視点からすると運転のすべて、または一部を機械任せにできるので業務の負担が軽減することになります。
ワンマン運転へ移行する
ATOやTASCの導入で運転士の負担が減ると、車掌がやっていた車内放送やドアの開閉を運転士が担当することができます。
運転台にモニターを設置しホームの様子を見られるようにしたり、運転士が運転席に座りながらドアの開閉をできるようにするなど、車両の改造は必要です。
車掌がいらなくなる
言わずもがな、ワンマン運転になると車掌が必要なくなります。
今まで2人で1本の電車を動かしていたのを半分の1人で運転できるようになるのです。
乗務員の人手不足も解消し、支払う賃金も減るので鉄道会社としては万々歳です。
まとめ
このようにホームドアが整備されると、自動運転で運転士の負担が減り、ワンマン運転が実施され、車掌が必要なくなるというサイクルができあがります。
しかも、整備費はお客さんから徴収する鉄道駅バリアフリー料金で半分まかなえるので鉄道会社にとってはとてもおいしい話なのです。
今後、このようなサイクルで鉄道会社は生き残っていくのではないでしょうか。