運転士時代に周りに電車の運転士をしているというと「車掌さんなんだ?」と返されることが多々ありました。
それだけ電車の運転士と車掌が違う仕事、ということを知らない人は多いです。
今回は電車の運転士と車掌の仕事内容と違い、共通点についてお話ししていきます。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
電車の運転士の仕事内容
電車を運転する
電車の一番前に乗り、信号、標識などを確認しながら電車を安全に、かつ時間通りに運転します。
電車の点検をする
電車を車庫から出す前に車内や床下機器を確認します。
電車の運転士が、安全に運転できる車両だと判断したのちに車庫から出すのです。
危険だと思ったら電車を止める
運転士の場合は前に乗っているので人立ち入り、人身事故、踏切事故などが発生する恐れがあり、そのようなときはすぐに電車を止めます。
車掌の仕事内容
ドアを開閉する
車掌は電車の一番後ろに乗り、駅に着いたらドアを開け、お客さんの乗り降りが終わったらドアを閉めます。
車内放送をする
次は~、まもなく~、のような放送から非常時の放送などをします。
特に非常時の放送は落ち着いてよりわかりやすくお客さんに伝えなくてはなりません。
駅到着、発車時に安全確認をする
駅に到着するときと発車した後に車掌は窓から顔を出し、電車にぶつかりそうな人はいないか、その他危険はないか、を確認しています。
車内改札をする
車内でお客さんの切符を確認したり、発売したりします。
切符の種類やルールは定期的に変更になるので常に勉強です。
危険だと思ったら電車を止める
車掌は駅到着時、発車時に人が電車にぶつかったり、お客さんの衣服や荷物が挟まったまま発車した場合などに電車を止めます。
また、運転士の勘違いなどによりオーバーランしそうなときにも車掌が電車を止めます。電車の運転士と車掌の仕事の違い
国家資格の有無
電車の運転士は動力車操縦者運転免許という国家資格が必要ですが、車掌には免許はありません。
育成期間の違い
運転士は学科3ヶ月、技能9ヶ月ほどで育成に約1年間かかります。
車掌は学科1ヶ月、技能2ヶ月ほどと運転士と比べると短いです。
車両の知識の有無
電車の運転士は車両のことを勉強します。
車掌は基本的に車両についてはわからないので車両点検などは運転士がおこないます。
営業知識の有無
切符のことや営業的なルールについては車掌が勉強しています。
運転士は運転、車両に関してはプロでも営業に関しての知識はあまりありません。
お客さんに対する意識
運転士は黙々と自分のペースで運転しますが、車掌は車内放送やドアの開閉などお客さんのペースに合わせておこなっている業務が多いです。
運転士より車掌の方がお客さんのことを常に意識しながら仕事をしているような印象です。
非常時の知識の豊富さ
運転士は育成期間も長く、運転や車両についてはプロです。
非常時の知識についても運転士の方が豊富なので、車掌が運転士にどうしたらいいのか確認することはよくあります。
電車の運転士と車掌の仕事の共通点
危ないと思ったら電車を止めるということは電車の運転士と車掌の仕事の大きな共通点です。
前後から4つの目で確認し、鉄道の安全を守っています。
また、脱線事故など大きな事故が起こった場合、他の電車を止める列車防護という行動も共通の仕事です。
運転士が前方に走っていき列車を止め、車掌が後方に走っていき列車を止めます。
車掌のいないワンマン運転とは?
最近は首都圏でもワンマン運転が広がってきています。
関東の大手私鉄では約半数、JR東日本では全社の7割ほどの路線がワンマン運転となっているそうです。
ワンマン運転では運転士が車掌の役割を担い、ドアの開閉や車内放送もおこないます。
ただ、正直運転士は走行中ずっと気を張って運転してるので、停車中もドアの開閉をおこなうとなると、集中力が続かず事故のリスクが増えてしまうのでないかと個人的には思ってしまいます。
ですから、自動運転とワンマン運転をセットにするなどハード面をきちんと整備してからおこなうべきだと思います。
バスの話になりますが、1980年頃まではバスにも車掌が乗っていました。
電車もいつかは車掌が昔は乗っていたんだよといわれる時代がくるかもしれませんね。
運転士は車掌と兼務ができる
車掌は運転士ができなくても、運転士は車掌と兼務することができます。
鉄道会社によってですが、JR東海の東海道新幹線などでおこなわれています。
どちらもできれば欠員がでた際や大幅なダイヤ乱れの際に効率的に乗務させることができますね。
ただ、2つの仕事は似てるようで全く違う仕事、どちらも同時に極めることは難しく安全面を考えるとリスキーだなと個人的には思います。
あとがき
今回は運転士と車掌の仕事の違いや共通点、ワンマン運転の話をしました。
時代の流れでワンマン運転が増え、車掌の数が徐々に減っています。
今後の人口減少、生産人口減少などを見据え、ある程度は仕方ないと思いますが、車掌という仕事がなくなっていくのは何だか寂しいですね。