電車の運転士になるためには国家資格である動力車操縦者運転免許を取得しなければなりません。
今回は動力車操縦者運転免許を取得するまでの流れ、そして単独乗務するまでの流れを細かくお話します。
これから電車の運転士を目指そうという方には役立つ情報だと思いますのでぜひ読んでみてください。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
STEP1:鉄道会社に就職する
これは言わずもがなですが、電車の運転士になるためにはまず鉄道会社に就職しなければなりません。
最近は鉄道会社は人手不足なのもあり、他の会社からの転職でも電車の運転士になれる可能性が全然あります。
鉄道会社に入る方法は別記事で書いてますのでよかったら読んでみてください。
STEP2:適性検査に合格する
電車の運転士になるための関門として適性検査があります。
鉄道会社に入社しても適性検査に通らず、運転士を諦めたという方は一定数います。
身体検査
電車の運転士にとって視力と聴力検査が特に重要です。
視力は両眼で1.0以上、かつ、片目0.7以上と定められています。(矯正含む)
目の関係では視野の広さを計る検査もあり、規定以上でなければなりません。
聴力は5m以上の距離のささやき声が明らかに聞こえることと定められています。
聴力検査の仕方としてはヘッドフォンをして、低音と高音が流れてくるのでそれが聞こえれば異常なしです。
反応速度検査
画面に青、黄、赤のいずれかの色の丸が表示され、その色に応じたボタンをできるだけ早く押す検査です。
運転士は信号の色を瞬時に見分け、対応しなくてはならないことからおこなわれてる検査です。
内田クレペリン検査
鉄道会社の入社試験でもおこなわれるので有名ですが、繰り返し30分ほど簡単な足し算を解き続ける検査です。
繰り返しの作業をミスなくどのくらいの仕事量で続けられるかを見極めます。
STEP3:学科講習を受講する
400時間ほどの講習を受け、最終試験で各教科70点以上をとらなくてはなりません。
鉄道会社によって講習所を設けているところと独学で学ばなくてはならない会社もあるようです。
学科講習で学習する教科について紹介します。
鉄道電気
直流や交流の違い、フレミングの左手の法則、電磁力など鉄道が関係する電気について学びます。
鉄道車両
車両の構造、床下機器、回路の電気の流れ、ブレーキなどの仕組みを学びます。
運転法規
鉄道に関する法律の中身や、閉そくなど運転に関するルールについて学びます。
運転理論
電車が駅の間で加速、惰行、ブレーキをしてどのくらいの時間を要するかなどを計算するものです。
数学嫌いの方はけっこうつまづきます。
信号線路
信号やATSなどの保安装置、標識、線路などについて学びます。
ATSなどの保安装置に関しては目に見えないものなのでイメージが難しくて苦労した覚えがあります。
STEP4:技能講習を受ける
学科講習を無事合格すると今度は現場で半年ほど、指導運転士と共に乗務しながら仕事を覚えます。
それとは別に非常時の対応、出区点検の手順も覚えます。
STEP5:技能試験を受ける
試験官が電車に乗り、運転を採点します。
定時運転、ブレーキの操作など基本的なものから、速度計を隠して現在の速度を当てる速度観測、目標物までの距離を当てる距離目測などがおこなわれます。
特に厳しいのは信号喚呼で、1回でも言い忘れたり言い間違えると不合格になります。
逆にブレーキや運転時間に関しては減点が少なく、それだけで不合格になることはほぼありません。
5人以上運転台にいる状態で運転をするのでとても緊張したことを今でも覚えています。
STEP:6動力車操縦者運転免許交付
一人ずつ手渡しで運転免許が交付されます。
免許は数日で会社に預けてしまうので、みんなコピーしたり写真に撮ったりしてましたね。
STEP7:単独乗務に向けた最終調整
動力車操縦者運転免許を取得したあとも指導運転士との乗務が数ヶ月続きます。
免許は取得できても、本当に一人で運転できる資質があるか、知識があるかをきちんと確認します。
いよいよ単独乗務
約1年かけてようやく単独乗務となります。
ミスをしても隣で指摘してくれる指導運転士はもういません。
ここからはプロの電車の運転士として経験を積んでいくことになります。
あとがき
今回は電車の運転士が動力車操縦者運転免許を取得するまでの流れ、単独乗務するまでの流れを細かく紹介しました。
電車の運転士はこの養成期間が一番大変といっても過言ではありません。
大変だったからこそ一緒に頑張った仲間だったり思い出は今でも忘れられません。
これから電車の運転士を目指す方はぜひ参考にして頑張ってみてください。