電車の運転士:運転と仕事の大変さ

鉄道コム にほんブログ村 鉄道ブログへ

電車の運転

今回は約20年ほど電車の運転士をしていた私が「電車の運転は難しいのか?大変なのか?」という素朴な疑問についてお話していきます。

電車の運転士になりたい方にも役立つ情報だと思いますので活用してみてください。


ファルコ

1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。

電車の運転士は覚えることがとにかく多い

電車の運転ができるようになるためにはまず見習い時にたくさんのことを覚えなくてはなりません。

学科講習を終えたのち、指導運転士と共に半年以上乗務して独り立ちします。

自動車免許と流れは似ています。

運転士になるにあたって特に乗務して覚えることを紹介していきます。

喚呼の仕方を覚える

最初は指導運転士の隣で見ながら指差喚呼のタイミングや言葉等をある程度覚えます。

制限速度を覚える

曲線標

カーブにはそれぞれ通過する速度が決まっているので覚えます。

カーブには曲線標という曲線半径が記されたものがあるのですが、それを見るだけで運転士は制限速度がわかります。

さまざまな制限速度の種類については別記事で書いてますのでよかったらどうぞ。

www.excellentitem.com

信号の位置を覚える

電車の信号機

どこに自分の線路に対する信号があるのが全て覚えます。

特に大きな駅にはたくさんの信号があるので覚えるのが大変です。

停止位置の場所を覚える

停止位置目標

両数の種類がたくさんある線区では特に覚えるのが大変です。

両数が違えばブレーキをかけるタイミングも違うので各両数毎の停止位置の場所をしっかり覚えます。

勾配の位置を覚える

勾配標

いわゆる坂です。

鉄道は車よりも坂の影響が受けやすく特に下り坂は速度が上がってしまったり、ブレーキが効きにくくなったりするので勾配の位置を把握することはとても重要です。

ノッチ扱いを覚える

制限速度などをある程度覚えてきたら区間毎にここは何km/hまでスピードを出してここのカーブの制限にはブレーキをかけて速度を落とすなど、具体的な運転方法を覚えます。

運転時分を覚える

同じ区間でも列車によって運転時分はバラバラです。

朝のラッシュ時間帯は昼間と比べて運転時分に余裕があります。

時分が違うとノッチ扱いも変わってくるのが難しいところです。

ブレーキの感覚を覚える

電車のブレーキ

電車は何といってもブレーキが難しいです。

電車でGO!をやったことある方ならわかるかもしれません。

ただ、見習い時はブレーキは基本的なことしか教わらずあとは感覚で覚えていきます。

不思議なのは人によって上手い下手があって一番センスが問われるところかもしれません。

車庫の配線を覚える

意外と大変なのがここです。

車庫内はスピードは出さないのですが、線路も信号も多く複雑なので覚えるのが大変です。

出区点検を覚える

電車を車庫から出すときに電車の運転台や車内、床下などさまざまなところを手順通りに点検するのですが、手順が多く覚えるのに苦労します。

非常時の取り扱いを覚える

人身事故、踏切事故など電車を運転しているとさまざまな非常事態が起こります。

このようなことが起こった時にできるだけ落ち着いて対応できるようにマニュアル化されたものを熟読して覚えます。

電車の運転士は不規則勤務

泊まり勤務が多く終電まで運転することや、逆に始発から運転することもあります。

日によってバラバラなので生活リズムは崩れやすいです。

さまざまなところで寝泊まりするのでどこでもすぐに寝られるという人が向いています。

運転士の1日のスケジュールなど勤務形態については別記事に詳しく書いてますのでよかったらどうぞ。

www.excellentitem.com

電車の運転士は常に時間に縛られる

運転中は言うまでもなく秒単位で仕事をして区間毎に運転時分を確認し、速度を計算しながら運転しています。

また、休憩中は常に次に乗務する列車の時間を気にしています。

これだけ時間に縛られて仕事をしているので時間にルーズな人でも無意識で時間管理ができるようになります。

遅刻や乗務する列車に乗り遅れてしまうと会社から処分され、昇進しにくくなったりするので電車の運転士が特に気を付けていることの一つです。

非常時の判断が難しい

運転中は1人なので何か非常時があった場合、自分で判断することが多いです。

車掌や指令所とは連絡ができますが、現場を見ているのは自分だけなので適切な判断と情報提供が必要です。

何か疑わしいことがあれば安全側で行動するように強く指導されています。

電車のブレーキはやはり難しい

何年運転士を経験してもブレーキは難しいです。

同じ形式の車両でも個体差があります。

ブレーキがよく効く車両、効かない車両、低速だけ効く車両など乗務してから把握して調整します。

同じことを繰り返すことの難しさがある

毎日同じ作業をする中に注意することがたくさんあります。

信号も毎日青なのに突如今日は赤だったりするわけです。

思いこみで作業をせずに確認を繰り返すことは簡単なようで難しいです。

大きなプレッシャーがかかる

お客さんがたくさん乗ってる電車を運転しているというプレッシャーに打ち勝たなくてはなりません。

プレッシャーを感じすぎても感じなすぎていけません。

お客さんがたくさん乗っている電車で危険な場面に遭遇し、自分の判断で止めることは思ったより難しいです。

まとめ

今回は「電車の運転は難しいのか?大変なのか?」という疑問について書いてみました。

ごく一部の紹介ですが、電車の運転の難しさと日々の運転士の苦労が少しは伝わったかなと思います。

それでも電車の運転士は達成感があり、楽しい仕事でもあります。

ぜひ電車の運転士になりたい方は目指してみてください。