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JR西日本の事故の背景:電車の運転士の日勤教育の内容とは?

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運転士の日勤教育

日勤教育という言葉を知っている方も多いかもしれません。

日勤教育とは実際はどのようなものなのか、どのようなミスで日勤教育になるのか、など電車の運転士の目線で詳しくお話ししていきます。


ファルコ

1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。

電車の運転士の日勤教育とは?

日勤教育とは電車の運転士や車掌がミスをしたときに、乗務でなく日勤に勤務指定して教育をすることをいいます。

2005年JR西日本で発生した福知山線脱線事故では、社内の清掃や草むしりなど、乗務とは関係のない見せしめ的な教育をしてたことが事故の原因にも繋がったと指摘されました。

福知山線脱線事故までは見せしめ的な日勤教育がありましたが、事故を機にカリキュラムがしっかり組まれ、日勤教育のあり方が変わりました。

電車の運転士はどのようなミスをすると日勤教育になる?

基本的にはお客さんを死傷させるような大きな事故に繋がるようなミスをした場合、ニュースで報道されるような大きなミスをした場合は日勤教育になる可能性があります。

日勤教育をするしないに決まりはなく、職場の現場の長の判断に委ねられます。

信号冒進

冒進とは赤信号を行きすぎることです。

赤信号の先には他の列車がいる可能性があり、列車衝突事故を起こす原因となるなど運転士にとって非常に重いミスです。

速度超過

カーブや信号の速度制限を超えることです。

速度制限は理由があって設けられているので、制限速度を超えると脱線事故や信号冒進にも繋がります。

カーブの制限速度超過は福知山線脱線事故の直接的原因にもなりました。

早発

時刻表の時間より早く電車を発車させてしまうことです。

駅で乗れないお客さんがでてしまうなど大きな影響がでます。

流転

ドアが開いてる時、なおかつ、坂になっているところでブレーキを緩めてしまうとドアが開いたまま電車が動いてしまうことになります。

ドアが開いたまま電車が動けばお客さんが線路に転落してしまうなど、怪我をさせてしまう可能性があります。

ATSなどの独断復帰

何らかの理由でATSなどの保安装置の非常ブレーキが動作したとき、指令所の許可を得ずに復帰してしまうことを独断復帰といいます。

ATSが動作するということは何かしらのミスをしたことも考えられるため、指令所に連絡をしなくてはなりません。

大幅オーバーラン

小さなオーバーランはある程度許容されていますが、駅を通過してしまうような大幅なオーバーランはお客さんにも大きな迷惑が掛かります。

危険なのに列車を止めない

線路内に人がいるのに電車を止めなかった、異音がしたのに電車を止めなかったなど、電車を止めなければならない場面で電車を止めないと大きな事故に繋がる可能性がありりますし、運転士としての資質が問われることになります。

嘘の報告・隠蔽

嘘の報告をしたり、あったことを隠そうとすることです。

これは一番重く、下手したら運転士ではない職種にされてしまうことさえあります。

原因究明や再発防止のためにきちんと報告することが最重要とされています。

電車の運転士の日勤教育の内容は?

経緯を聴取される

ミスをしたときの時系列を事細かに聞かれます。

自分のミスをした場面を細かく説明するのは精神的にしんどいですが、原因を調べるためにも必要なことなのです。

対策を管理者と考える

再度同じようなミスをしないように具体的な対策を管理者と一緒に考えます。

次の乗務からはその対策を活用して業務することになります。

現地に行く

場合によってはミスをした場所に管理者と行き、現場を見ながら状況の確認をします。

会議室ではなく現地に行くことで見えてくることもあります。

反省文を書く

厳密には反省文という名前ではありませんが、内容は反省文そのものです。

なぜミスをしてしまったか、今後どのように業務に取り組んでいくかなどを書き、管理者に提出します。

シミュレーターで普段の仕事の仕方を確認する

普段の仕事の仕方に問題がないかをシミュレーターを活用して洗い出しをします。

きちんとやるべきことをやっていればミスは起きないので洗い出しをすることは重要です。

現場長と面談

日勤教育中に学んだこと、今後の業務への活かし方について現場長と話し合います。

最終的に現場長がゴーサインを出せば、乗務に戻ることができます。

日勤教育をしている時の周りからの目は?

残念ながら日勤教育をしていると噂が広まり、職場の人には知られてしまいます。

しかし、電車の運転士は基本的にミスに対して明日は我が身という考えをもっています。

ですので、ミスをしてしまった運転士を職場全体でフォローしてあげようという雰囲気があり、慰めの言葉をかけたり、飲み物を差し入れたりします。

日勤教育はミスをしてしまった運転士は精神的にしんどいですが、同じミスをみんなが起こさないようにするために必要なことなのです。

あとがき

日勤教育というと罰則のようなイメージがある方もいるかと思いますが、現在の日勤教育は決してそうではなく再発防止のために必要なカリキュラムです。

人はミスをするものであり、ミスを共有することで職場、そして会社全体の安全性を高めていくことが一番の目的です。

日勤教育を受ける運転士はしんどい思いをしますが、こうやって過去の事故、ミスの教訓によって今の鉄道の安全はあるのです。