電車がオーバーランしたというニュースはよく見聞きしますよね。
2024年4月8日にはJR東日本特急いなほが、新潟県中条駅を約500mオーバーランし、そのまま次の停車駅に向かったというニュースがありました。
降車予定だった6人は次の駅で降り、普通電車に乗り換えて向かったようです。
お客さんにも多大な迷惑がかかるオーバーラン。
今回は電車がなぜオーバーランしてしまうのか、オーバーランしたら電車の運転士はどのような対応をするのか、罰則などはあるのか?について詳しくお話ししていきます。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
電車がオーバーランする6つの原因
①編成両数の勘違い
複数の両数の電車が走っている路線で起こります。
駅によってではありますが、両数によって停車させる停止位置が違います。
勘違いしなければ起きないのですが、電車の運転士が両数を毎駅意識するのは思った以上に難しいです。
一瞬でも両数を勘違いしてしまうと簡単に起こってしまうのです。
②停車通過の勘違い
停車駅を通過駅だと思い込んで起こるもので、普通列車を運転しているのに一時的に快速列車や回送列車を運転しているものだと思い込んだりして起こります。
③ブレーキの効きの見誤り
ブレーキが思ったより効かずに停止位置を過ぎてしまうことです。
車両によってのブレーキの効きの違い、雨天時のブレーキでの滑走も原因になります。
見習い運転士でありがちなオーバーランはこれが原因です。
④割り込み要因によるもの
運転しているとさまざまな割り込み要因があります。
よくあるのはお客さんが黄色い線の外側を歩いてて、気になってそちらに集中してたらいつの間にか停止位置が目の前に!というようなものです。
あとは無線に集中してしまうこともありがちです。
無線は人身事故などの第一報が入ってきたりするのでどうしても気になるのです。
⑤眠気によるもの
こちらの記事でも紹介しましたが、電車の運転で眠気は最大の敵です。
⑥ぼーっとしていた、考え事をしていた
寝ていなくてもぼーっとしてしまうことや考え事をすることは人間なのであります。
駅が近づいてくれば基本的にブレーキに集中するのですが、タイミングによってはオーバーランすることもなくはありません。
電車の運転士のオーバーランが起きた時の対応
数m程度のオーバーラン
車掌と打ち合わせをし、そのままの位置でドアを開けることもあります。
ただし、お客さんの乗降を見るための車掌用モニターが見えないときには電車を後ろにバックさせます。
数十m~数百mのオーバーラン
電車が全てホームに入ってる時には基本的に車掌や指令所と打ち合わせて電車をバックさせます。
しかし、ホームからはみ出るくらいの大幅なオーバーランの場合は後続電車との関係や、近くに踏切のある場合は踏切を故障させる可能性もあるのでそのまま駅を通過させることがあります。
オーバーランに後続電車が関係する理由
実はオーバーランした時には大きな事故のリスクがあります。
オーバーランした時に後続電車がすぐ近くまで迫っている場合にそのままバックすると衝突する可能性があるのです。
近くまで後続電車が迫ってくる可能性のある駅は運転士、車掌がきちんと把握しています。
オーバーランに踏切が関係する理由
オーバーランした駅の先に踏切がある場合、電車がバックすると踏切が誤作動を起こし踏切が開いてしまうことあるのです。
踏切が開いたまま電車が通過してしまう可能性があるので非常に危険です。
電車の運転士がオーバーランをしたときに罰則はあるのか?
オーバーランをしたときの細かい経緯と次に同じことを起こさないための対策を管理者と一緒に考えます。
程度や理由によっては何日か乗務せずに反省文を書いたり、シミュレーターを利用して普段の業務の弱点の洗いだしをしたりします。
それでも何度も繰り返しオーバーランした場合などは減給や運転士ではない違う職種に配置転換されることはありえます。
あとがき
今回はよくニュースで報道される電車のオーバーランについてお話ししました。
さまざまな要因でオーバーランが発生することはお分かりいただけたと思います。
私も経験がありますが、自分のミスで電車が遅れるというのは想像以上に精神的ダメージが大きいものです。
そんな精神状態でも運転を続けなくてはならないのです。
このようなときこそ冷静に、というのが電車の運転士にとって最も重要なところかもしれません。