今回、電車の運転士が人身事故を起こし、不適切な発言をして拡散、炎上している問題について元運転士として思うことも含めてお話ししていこうと思います。
ファルコ
1970年生まれ。鉄道会社に入社し、駅員(1年)→車掌(3年)→運転士(30年)に従事。鉄道ファンだけでなく普段から電車を利用するすべての方が分かるような記事作りを心掛けています。
電車の運転士の人身事故に対する不適切な発言内容
引用:JR東日本労働組合ホームページ
JR東日本の労働組合のホームページのイメージ画像からもわかるように人身事故のことをおもしろおかしく書き、それを社内誌の記事として発信しました。
せめて「人身事故最年少記録を達成した」ではなく「最年少で人身事故をやってしまった」にしたり、少し書き方を変えるだけでもここまでの炎上はしなかったでしょう。
忘れていけないのは人身事故は人が亡くなっている可能性があります。そのような記事で「笑」を付けたりおもしろおかしく書くのはありえません。
それに加えて社内誌として発信を許可してしまった職場の管理者の責任も重いのではないでしょうか。
社内誌だから大丈夫だろう、というのはあったかもしれませんが、さすがに元運転士の私からしても社内誌として発信するのは理解できません。
人身事故のことをおもしろおかしく話すことは正直ある
社内誌には載せなくても会話の中では人身事故についておもしろおかしく話すということは正直あります。
お前が出番でいると人身事故が起こるとか、あいつ短期間で3回も人身事故やったらしいよとかそういう会話はあります。
しかし、人身事故の現場というのは想像以上に壮絶です。
電車の運転士は人身事故を起こしてしまうある程度の覚悟はできてるものの、いざ人身事故に遭遇すると寝られなくなったり、運転が怖くなったりします。
壮絶な現場を見て、運転士はもう続けたくないと思う人もいます。
人身事故は避けられるものでもないですし、みんなそんなしんどい思いをしてるからこそ、少し割り切って笑い話にしないとやってられないという心情もあるのです。
そんな心情もあってか、人身事故を起こしてしまった運転士を囲んで飲み会をやったりもします。
落ち込んでしまってもどうしようもないので、みんなで飲んで忘れようというような感じです。
人身事故の経験の共有は大切
人身事故に遭遇した人の経験談が非常に役に立つというのも事実です。
もしかしたら社内誌でも、この続きに真面目な経験談が書いてあるのかもしれません。
それでも、人身事故のことを一部分でもおもしろおかしく書くことは理解はできませんが…。
いつもしているような会話が露呈してしまったというような状況だと思います。
不適切な発言について私が思うこと
私個人的には、今回の不適切な発言について、普段の会話としてなら元運転士として理解できます。
しかし、社内誌に載せてしまうというのは後々にも残るものですし、社内の不特定多数の人に見られるものですから、到底理解できません。
ただ、電車の運転士が人身事故に対しておもしろおかしいことと普段から思っている訳ではないということはわかっていただきたいです。
人身事故を起こしてしまった時はトラウマになるし、相当しんどい思いをします。しかし、その後、トラウマがあったままでは運転士として続けるのが難しくなります。
自己防衛的にも暗くならない方向にもっていこうという気持ちが人間にはあるのだと思います。
人身事故は職場内で何度も起きてしまうことですし、そのたびに職場が暗くなっていたらとてもやってられません。
みんなで労いの言葉をかけつつ、明るい方向に持って行くしかないのです。
ですから人身事故を起こした運転士をいじってやろうとかそういう気持ちではないです。
切り替えてやっていかなきゃいけないことをみんな知ってるからこそそのようなことが起こるのです。
あとがき
今回はXでも拡散されてしまった電車の運転士の不適切な表現についてお話ししました。
電車の運転士を経験したことある人ならある程度、気持ちが理解できても、やはり社内誌に書くのはありえません。
一般の方から見たら人身事故のことをただ楽しいことのように扱っているだけに見えますからね。
せっかくみんな大変な思いをして運転士の仕事をしているので、今後はこのような悪いイメージをもたれるような問題は起こさないようにしてもらいたいものです。